「ソイプロテインを飲むと、イソフラボンのせいで男性ホルモンが低下する」
「女性ホルモンが増えて、胸が大きくなるなど女性化する」
こんな話が、まことしやかに言われています。
たしかに、大豆イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと構造が似ています。
ただし、構造が似ているから、ソイプロテインを飲んだ男性が女性化するというのは、途中の話を全部すっ飛ばしています。さすがに理屈が雑すぎます。
では、実際に男性がソイプロテインやイソフラボンを摂取すると、テストステロンやエストロゲンはどう変化するのでしょうか。
今回は、個人の体験談やSNSのうわさではなく、論文をもとに確認していきます。
結論
先に結論を述べると、通常の食品やソイプロテインとして研究された範囲では、イソフラボンによる男性ホルモンの低下や女性ホルモンの増加は確認されていません。
2021年に発表されたメタアナリシスでは、ソイ食品・ソイプロテイン・イソフラボンを摂取した男性の研究を統合して分析しています。
※メタアナリシス:複数の研究結果を統合して統計的に解析することで、単一の研究よりも信頼性と精度の高い結論を導く研究手法
その結果、以下の項目に有意な変化は確認されませんでした。
- 総テストステロン
- 遊離テストステロン
- エストラジオール
- エストロン
- SHBG
摂取量や試験期間ごとに分けて分析しても、結果は同じでした。少なくとも現在の研究結果からは、ソイプロテインを飲むと男性ホルモンが低下して女性化する、とは言えません。
論文ではどのような結果が出ている?
41件の研究を統合した2021年のメタアナリシス
2021年のメタアナリシスでは、男性を対象とした41件の研究が分析されました。
分析対象となった人数は、測定項目ごとに以下のとおりです。
- 総テストステロン:1,753人
- 遊離テストステロン:752人
- エストラジオール:1,000人
- エストロン:239人
- SHBG:967人
これだけのデータを統合しても、ソイやイソフラボンの摂取による有意な変化は確認されませんでした。
さらに、イソフラボンの摂取量や試験期間によって研究を分けても、テストステロンやエストロゲンへの影響は確認されていません。
「大豆を食べたら男性ホルモンが減る」という話が本当なら、これだけの研究を集めれば、そろそろ何らかの傾向が出てもよさそうなものです。
しかし、出ていません。
2010年のメタアナリシスでも同様の結果
同じテーマについては、2010年にもメタアナリシスが発表されています。
こちらでは、15件のプラセボ対照試験と、32報・36群の研究データが分析されました。
その結果、以下の項目に有意な影響は確認されませんでした。
- 総テストステロン
- 遊離テストステロン
- SHBG
- 遊離アンドロゲン指数
研究者は、ソイ食品やイソフラボンサプリメントは、男性の生体利用可能なテストステロン濃度を変化させないと結論づけています。
2021年の研究は、この2010年のメタアナリシスを拡張・更新したものです。研究が増えた後に再検証しても、結論は変わらなかったわけです。
47人が12週間ソイプロテインを摂取した研究
2018年には、大学生年代の男性47人を対象にした研究が行われています。
参加者は12週間の筋力トレーニングを行いながら、以下のいずれかを摂取しました。
- ソイプロテイン
- ホエイプロテイン
- プラセボ
その結果、ソイプロテイン群でも血中エストラジオールは増加せず、筋肉や脂肪組織における男性ホルモン・女性ホルモン関連の指標にも、ソイ特有の変化は確認されませんでした。
研究者は、継続的なソイプロテイン摂取は、男性ホルモン・女性ホルモンに関連するバイオマーカーへ明確な影響を与えなかったと結論づけています。
1日50gを12週間摂取した研究
2007年の研究では、男性20人が筋力トレーニングを行いながら、ソイプロテインやホエイプロテインを1日50g、12週間摂取しました。
その結果、タンパク質の種類による以下の項目の差は確認されませんでした。
- 総テストステロン
- 遊離テストステロン
- SHBG
ソイプロテインを摂取したグループでも、テストステロンの低下は確認されず、除脂肪体重も増加しています。
また、摂取したプロテインが原因と考えられる重大な有害事象も報告されませんでした。
少なくとも、一般的なプロテインとして摂取する量で「筋肉をつけるどころか女性化してしまう」という心配を裏付ける結果ではありません。
イソフラボンの摂取量はどこまで大丈夫?
食品安全委員会は、大豆イソフラボンアグリコンの安全な1日摂取目安量の上限を、70〜75mgとしています。
また、特定保健用食品などから通常の食事に追加して摂取する量については、1日30mgを上限としています。
ここで注意したいのは、70〜75mgを1mgでも超えたら健康被害が起きる、という意味ではないことです。
この数値は、日本人の摂取量調査や長期間摂取した試験などをもとに、安全側へ余裕を持たせて設定されています。
食品安全委員会の資料では、日本人の大豆イソフラボン摂取量の95パーセンタイル値が、1日約70mgと推定されています。つまり、推定上は日本人の約5%がこの量を上回っています。
紹介サイトでは、当時の人口から計算すると約600万人が基準値を超える量を摂取していたことになり、それでも大豆食品による明確な健康被害は報告されていないと説明されています。
日本では昔から、豆腐、納豆、味噌、豆乳などが普通に食べられています。
もし安全目安を少し超えただけで重大な問題が起きるなら、大豆食品を日常的に食べる日本では、とっくに大問題になっているはずです。
まとめ
ソイプロテインに含まれるイソフラボンについて、論文から確認できる内容をまとめると以下のとおりです。
- 男性41研究を統合したメタアナリシスで、テストステロンやエストロゲンへの有意な影響は確認されていない
- 2010年のメタアナリシスでも、男性ホルモンの低下は確認されていない
- 男性が12週間ソイプロテインを摂取した研究でも、女性ホルモン関連指標の増加は確認されていない
- 1日50gのソイプロテインを摂取した研究でも、テストステロンの低下は確認されていない
- 日本の摂取目安量は、健康被害が発生する境界線ではなく、安全側へ余裕を持たせた目安
- 日本人の約5%が推定上限を超えて摂取しているものの、大豆食品による明確な健康被害は報告されていない
現時点の研究結果を見る限り、ソイプロテインを飲むと男性ホルモンが低下して女性化する、という説を支持する根拠はありません。
イソフラボンがエストロゲンと似ているという一部分だけを見て、「男が飲んだら女性化する」と結論づけるのは、さすがに乱暴です。
ソイプロテインを選ぶ際は、根拠の薄い女性化のうわさよりも、価格、タンパク質含有率、飲み続けやすさなどを見て選んだ方が、よほど現実的ではないでしょうか。
参考文献
- Reed KE, Camargo J, Hamilton-Reeves J, Kurzer M, Messina M.
Neither soy nor isoflavone intake affects male reproductive hormones: An expanded and updated meta-analysis of clinical studies.
https://doi.org/10.1016/j.reprotox.2020.12.019 - Hamilton-Reeves JM, Vazquez G, Duval SJ, et al.
Clinical studies show no effects of soy protein or isoflavones on reproductive hormones in men: results of a meta-analysis.
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Soy protein supplementation is not androgenic or estrogenic in college-aged men when combined with resistance exercise training.
https://doi.org/10.1038/s41598-018-29591-4 - Kalman D, Feldman S, Martinez M, Krieger DR, Tallon MJ.
Effect of protein source and resistance training on body composition and sex hormones.
https://doi.org/10.1186/1550-2783-4-4 - 食品安全委員会
大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A
https://www.fsc.go.jp/sonota/daizu_isoflavone.html